天翔ける君
さっきの薄茶色の髪の男もだが、千鬼も着流しがとても似合う。
白の着物なんて特に男は着こなすのが難しそうに思うのに、千鬼にはぴったりだ。
「じろじろと見るな」
涼しい表情のまま言われて、恵都は慌てて下を向いた。
一組しかない布団の上にのせられ、そんな近くに座られたら嫌でも見てしまう。
それに、この部屋には布団以外には枕元の刀しか置かれていない。
ずっと俯いていろとでも言うつもりだろうか。
恵都が所在なさげにしていると、再び襖を開けて、さっきの薄茶の髪の男が現れた。
「これ、その人間の女の荷物だろ?ここに置いておくからな」
スクールバッグを入り口付近に置いて、男はさっさと襖を閉めかけ、
「あ、この部屋でもっていうか、屋敷の中では食うなよ。汚れるから」
言うだけ言って、千鬼の返事も待たずに今度こそ襖を閉めた。
男が去ると、部屋には再び静寂が訪れる。
そうすると、恵都はどうしても想像してしまう。
汚れるって、きっと血だとかのことなんだろう。
自分の体から血が噴き出して、それで部屋が汚れるのを想像してしまった恵都は指先が冷たくなった。