天翔ける君



――というのは千鬼がおしえてくれたわけではなく、薄茶色の髪の青年、山吹(やまぶき)から聞いた話がほとんどだ。

山吹は薄茶色の髪に不思議な金色の瞳が印象的な爽やかな雰囲気の青年だ。
千鬼よりも背が高く、中性的な千鬼とは印象の違うかっこよさがあると恵都は思う。

山吹は千鬼の屋敷に一緒に住んでいて、食事や掃除などの家事をこなしている。
だからといって使用人というわけでもない不思議な関係だ。

本当は山吹のような妖がもう二人いるのだが、町の外に用があるらしく今は出払っているそうだ。
まだしばらく戻らないから一人で大変だと山吹がぼやいていた。


千鬼は感情が表に出ず、考えが全くといっていいほど読めないが、山吹は真逆だ。
感情そのままの表情と言葉使いで、妖相手におかしいかもしれないが、恵都は山吹と話しているとほっとする。

千鬼は真っ暗にならないと起きてこないが、山吹は夕方には起きる。
食事の用意を手伝いながら、千鬼が起きてくるまで色々な話をするのがここ数日で日課になった。

千鬼に合わせるために、恵都はすっかり夜行性になってしまった。


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