天翔ける君
そもそも、結婚なんて遠い未来のことだと思っていたのだ。
十年くらいは先の、うすぼんやりとした将来の話だ、と。
桜の花びらがまた一枚舞った。
はらはらと舞い落ちるそれは、地面に落ちてすら美しく庭を彩る。
「美しいな」
振り返ると、千鬼が竹の皮に包まれた何かを持って立っていた。
「やる」
と差し出され、恵都は反射的にそれを受け取った。
「この前、駄目にしてしまっただろう」
なんのことだか分からず、恵都は首を傾げつつ包みをほどいた。
「わぁ」
恵都は感嘆の声を漏らして目を輝かせる。
薄桃色の饅頭が十個ほど並んでいて、甘い香りがほんのりと漂ってくる。
「ありがとう」
饅頭のことなんて、恵都はすっかり忘れていたのに、千鬼は覚えていてくれたのだ。