天翔ける君
「わざわざ買ってきてくれたの?」
恵都が聞くと、千鬼は素っ気なく頷いた。
町に住む妖に呼ばれて出かけることは度々あったが、千鬼が自ら屋敷を出るのは珍しい。
その気持ちが嬉しかった。
出不精の千鬼がわざわざ、というのが余計に嬉しい。
千鬼が隣に腰を下ろす。
饅頭に手を伸ばし、それを恵都の口に押し付ける。
「……おいしい」
「少しは元気が出たか」
もぐもぐと咀嚼して飲み込む恵都には笑顔が戻っていた。
「なにか思い悩んでいたのだろう」
そう言われて、恵都はぴくりと肩を震わせた。
千鬼に分かるくらいなのだから、きっと山吹も気づいていたに違いない。
きっと山吹も気にしているだろう。
なんだか悪いことをしてしまった、と恵都はうなだれた。
「考えてたんだけど、よく分からないんだよね」