天翔ける君



「好きって感情がないってことはないんじゃないの?」

分からないけどさ、と付け足して、恵都は千鬼の返事を待った。

千鬼は面に出にくいだけで、感情がないなんてことはない。
わずかな表情の変化を恵都は見分けられるようになっていた。

「そもそも、好きというのはどういう気持ちのことだ?」

いつの間にか恵都の方が相談にのっているような気がする。

――私だって分からないよ。
その言葉は飲み込んで、恵都は考えを巡らせた。
千鬼に質問されると、恵都は習慣でつい考えてしまう。

「その人のことを考えると楽しくなったり、ちょっとしたことで幸せな気持ちになったり」

うーんと悩む恵都を千鬼はじっと待つ。

「……愛おしく思ったり?」

千鬼は恵都を見つめた。
嬉しそうな、でも少し泣き出しそうな、不思議な表情だった。

へへ、と恵都は照れ隠しに笑ってみるが、千鬼は視線をそらしてくれない。



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