恋するキオク
店に戻ると、明かりの届く位置でバンドのメンバーがオレを待ってた。
ホントに
懐かしさは時に大げさだ。
「圭吾!おかえり!なんかすっげー久しぶりに感じるじゃん」
「もう肩は大丈夫なんだろ?」
「あぁ、ありがとう」
でもオレの浮かない表情に、茜たちも一瞬戸惑う。
「…なんか、あったのか」
オレは野崎のことを少しだけ話した。
だからどうするって意見を求めるわけじゃなかったけど、こいつらはいろいろおせっかいで…
「なんか思い出の曲とかないのか?そういうの聞かせれば戻るとか、よくテレビで見るだろ?」
「そうそう、音楽の力は偉大だって!オレたちもできることは手伝うからさ」
「いいんだ。今は何する気もない」
「はぁ?なんでだよ!」
「悪いな。また今度ゆっくり時間作るから。今日は帰ってくれるか」
ポカンと口を開けたままのメンバーをおいて、オレは沢さんに手を上げながら店の奥の階段に行った。
足が、重い…
「君たちには申し訳ないけど、今日は圭吾くんをそっとしといてくれないか。いろなことで悩んで、きっとまた答えを探してるんだ」
「沢さん…、オレたちも沢さんに負けないくらい圭吾のこと考えてるつもりなんだ。でも何をしてやったらいいかわからなくて」
「みんな同じさ。どんなに周りが動いても、最後に道を決めるのは圭吾くん本人で。オレたちはその道を支えてやることしかできない」
「あーぁ!悔しいけど、あたし迷ってる圭吾も好きなんだよね。あたし以外の女のことで悩んでるなんて、ちょっとひがんじゃう気持ちもあるけど……、力にはなってやりたいって、いつも思ってんだよ」
「…ありがとう。圭吾くんもきっとそれをわかってるはずだよ」
月に黒く照らされるピアノ。
音は、どうしてこんなにも心を映し出すのかな。
今のオレは、
弱すぎて消えてしまいそうだ。