恋するキオク
「ごめんね、お父さんっ!すぐ帰るからっ」
「あ…あれだろ!省吾くんの言ってた、どうしようもない弟だろ!」
そう言われると、オレでもちょっと不機嫌になる。
「すぐに返します!!」
「はっ、おい、ちょっと待て!」
いつまでも怒鳴ってる声が、夜の闇の中でも遠く響いてた。
いくら野崎の父親でも、
誤解があるんだとしても…
「気分は良くないな」
「ごめん…。ちゃんとそうじゃないってこと後で伝えるから」
「いや、別にいいよ。どうせ他にもいろいろ説教受けることになりそうだし」
「えっ…?」
「いいからちゃんと掴まってろ」
守るべきものを肌で感じられること、そしてその鼓動を背中に感じられること。
たぶんオレは一生忘れない。
この気持ちだって、一生消せない。
「なんかいいな、こういうの」
「……うん」
髪をすり抜けてく風が、心地よい冷たさを全身に伝えて
二人重なるぬくもりを、いっそう強く結び合わせる。
もう、今までのことなんて気にしようとも思わない。
野崎が忘れたことも、オレの中にはちゃんと全部残ってるし。
でもその代わり、これから二人で見ていく景色だけは…
「絶対、忘れさせないよ」