恋するキオク
雨の音が目立って、それが二人の話し声を漏らさないようにと気遣っているようにも思える。
隣で話す省吾は、以前と変わらないままの優しい雰囲気で。
私を斜め上の角度から見下ろしながら、時々笑って後ろ髪を撫でた。
「正門のアーケードもなんとか順調に進んでてさ、あとは当日晴れてくれればすべて完璧って感じ!」
「うん、そうだよね」
小さく返事をして、私は視界に入る窓カラスをそっと眺める。
グレーに染まった雨の景色が、気持ちと同調するかのように空気を切なくさせて。
今から伝えようとする私の言葉に、うまく舞台を飾っているみたい。
「ねぇ、省吾」
「何?陽奈」
ドクン…
笑顔を向けられると、胸の奥の方がぐっとなる。
別れようとか、そういうことを言おうと思ってたわけじゃなかった。
ただ、私も自分の気持ちがよくわからなくなってたし
ちょっと省吾と距離をおいてみれば、なにか感じるものがあるのかもしれないって。
そんなふうに、考えてみただけで…
「どうした?」
「…ううん、なんでもないよ」
でも、優しい省吾の顔を近くで見ると、そんなこと言えないっていうか。
今はすごく忙しい時期で、私は省吾の力になってあげるのが本当は普通だから。
「オレこうやって陽奈と話してると、毎日の疲れもふっ飛ぶんだよな〜」
もう少し後でも、いいのかなって。
「私役立ってるんだ?」
「当然!心の支えだよ」
この時間を、消してしまいたいわけじゃないし。
圭吾に対して感じるこの想いが、一体なんなのかもまだよくわからないから。