恋するキオク



目を閉じると、余計なことまで考え込んでしまうから。

私は瞼を落とさないまま空を仰ぐ。



「雨、好きじゃないな……」



隣の教室を振り返れば、さっきと変わらず作り物の子たちが楽しそうに作業を続けてた。

なんだか変な気持ち。



圭吾はどうして私に、素っ気なくなったんだろう。

どうして急に、変わっちゃったのかな。



勝手な満足感。

私は圭吾にとって、他の子とは違う特別な存在なんだって、いつの間にか思い込んでしまってた。



モヤモヤして、ジクジクして。

どうすればスッキリできるのかも、全然わからなくて。



イベントなんて、早く終わっちゃえばいいのに。



私はため息をつきながら、劇の教室に戻ろうと視線の先を変えた。



「ふぅ〜っ……、あれ?」



圭吾……?

よく見ると、作り物の女の子たちの中には、さっきまでいたはずの圭吾の姿は見えなかった。

私は無意識に、辺りをキョロキョロと見渡す。



でも、探しながらふと思ったんだ。



見つけてどうするの?って。何のために探すの?…って。



今日は雨だし屋上にいるはずもない。

お手洗いに行ったのかもしれないし、他の子と買い出しに出掛けたのかもしれない。

でも、それを今の私が気にするのは、やっぱりおかしくて。



それでも気になるなら

近くにいたいなら



きっと、やらなければならないことが先にあるんじゃないかって。




「陽奈っ」


「……省吾」



声の方に振り返れば、省吾の笑顔。

省吾が部活以外で二年生の教室にくることは珍しい。

少し驚いたけど、それでも私は気持ちを落ち着けて省吾を見た。



「ちょっと時間いい?」


「うん…私も話したいことあるし」





省吾の背中を追って校舎を出る。

わずかな雨が霧のように霞める体育館への渡り廊下で、私と省吾は風を避けるようにして壁の裏側に座った。




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