2人だけの秘密。
「鏡子、」
「…」
夏木さんがいなくなった後、あたしは動けなくて立ち尽くす。
そんなあたしを絵里奈が心配そうに声をかけるけれど、何も言えない。
…帰る?
あたしは仕事をしに来たのに。
嫌がらせをされに来たんじゃない。
でも…
“遣いものにならないし”
「…っ、」
その言葉にショックを受けていると、絵里奈が言った。
「鏡子!」
「!」
「きっと、事務室に予備の制服あるよ。探しに行こ?」
絵里奈はそう言うと、あたしの手をひいて事務室に向かう。
その背中に黙ってついて行くと、あたしに背を向けたまま絵里奈が言った。
「…このこと、柳瀬店長にちゃんと言わなきゃダメだよ」
「!」
「じゃなきゃ、夏木さんや吉河さんの思うがままになっちゃうから」
「…ん、」
その言葉に一応頷くけれど、正直言える自信がない。
制服を切り刻まれた、なんて言ったら心配かけるに決まってる。
ただでさえ、修史さん最近出張多くて忙しそうなのに。
これ以上迷惑かけたくない…。
そんなことを思いながら歩いていると、ようやく事務室に到着して予備の制服を探した。
するとそれはちゃんと保管してあって、あたしはそれを借りるとようやく仕事を始めたのだった…。