2人だけの秘密。


………


………



そして仕事場に到着すると、今日も忙しい一日が始まった。

今日は社長が視察をしに来る日だから、売り場内にも緊張が漂う。

いつも綺麗にしているけれど、今日は特に売り場を綺麗にして完璧な状態にした。



…でも、こんな時でも鏡子のことを考えてしまう。



“…っ…修史さん!”



さっき俺を玄関で引き留めた時の鏡子が、頭から離れない。


…大丈夫、だよな?

どうか俺の考えすぎであってほしい。



そう思っていると…



「柳瀬店長、」



ふいに夏木ちゃんが、仕事のことで話しかけてきた。


…ダメだ。

今は仕事に集中しないと。




******




その後は何時間か経ったあと、売り場に社長が視察に来て、特に何事もなく一日が終わった。

途中、何度かハラハラしたことはあったけど、なんとか無事に帰ってもらうことが出来た。



「き、緊張しましたねー」



閉店後、絵里奈ちゃんがレジに座り込んでそう言うと、夏木ちゃんが笑って言う。



「絵里奈ちゃんずーっと顔引きつってたよ」



二人はそう言うと、お互いに仲良く笑い合った。

でも今は、その会話すらもあんまり耳に入ってこない。


…───早く鏡子に逢いたい。




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