2人だけの秘密。


その後、全ての仕事が終了してみんなはそれぞれ帰って行った。

そして俺も残りの仕事を済ませて、店を出る。

ドアに鍵をかけて車に乗ると、俺は早速鏡子に電話をした。


しかし…



「…あ、もしもし鏡っ…」



“この電話番号は、一切使われておりません───…”




携帯の向こうから、そんな声が聞こえて来た。


は…使われてない?そんなわけないじゃん、


そう思ってその後何度か繰り返し電話をかけてみるけれど、結果は同じで。

嫌な予感を覚えた俺は、すぐに車を走らせて鏡子のマンションに向かった。


…どうか、何かの間違いであってほしい。


そう思いながらようやく到着したそこに車を停めて、エレベーターを使って6階に上がる。

鞄の中に手を入れて、いつも合鍵が入っているところを手探りで探すけど…


何故か、合鍵が入っていない。


不思議に思って、スーツのポケットにも手を入れて合鍵を探す。

でも、どこにもない。そしてもちろんそのドアも鍵が閉まっていて、チャイムを鳴らしても鏡子は出てくれない。


まさか……


その瞬間、最悪な考えが脳裏を過った。


しかしそんなことを考えていると、ちょうどそこへ鏡子の隣に住んでいるらしい30代くらいの女の人が出て来た。

この人なら何か知ってるかも、と思った俺は、すぐにその人に鏡子の居場所を聞くけれど…



「あぁ、その人なら今朝この部屋を出て行ったよ。遠くの町に引っ越すって言ってたわ」



その人はそう言うと、その場を後にした。


< 160 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop