2人だけの秘密。
その後、全ての仕事が終了してみんなはそれぞれ帰って行った。
そして俺も残りの仕事を済ませて、店を出る。
ドアに鍵をかけて車に乗ると、俺は早速鏡子に電話をした。
しかし…
「…あ、もしもし鏡っ…」
“この電話番号は、一切使われておりません───…”
携帯の向こうから、そんな声が聞こえて来た。
は…使われてない?そんなわけないじゃん、
そう思ってその後何度か繰り返し電話をかけてみるけれど、結果は同じで。
嫌な予感を覚えた俺は、すぐに車を走らせて鏡子のマンションに向かった。
…どうか、何かの間違いであってほしい。
そう思いながらようやく到着したそこに車を停めて、エレベーターを使って6階に上がる。
鞄の中に手を入れて、いつも合鍵が入っているところを手探りで探すけど…
何故か、合鍵が入っていない。
不思議に思って、スーツのポケットにも手を入れて合鍵を探す。
でも、どこにもない。そしてもちろんそのドアも鍵が閉まっていて、チャイムを鳴らしても鏡子は出てくれない。
まさか……
その瞬間、最悪な考えが脳裏を過った。
しかしそんなことを考えていると、ちょうどそこへ鏡子の隣に住んでいるらしい30代くらいの女の人が出て来た。
この人なら何か知ってるかも、と思った俺は、すぐにその人に鏡子の居場所を聞くけれど…
「あぁ、その人なら今朝この部屋を出て行ったよ。遠くの町に引っ越すって言ってたわ」
その人はそう言うと、その場を後にした。