2人だけの秘密。
そしてマンションに帰ると、ネクタイをほどいてソファーに寝転がった。
店長だから毎日責任重大だし、帰ったら毎回疲労が半端ない。
…でも、今までは鏡子がいたから頑張れたのに。
鏡子は…
『…修史さん、』
だけどその瞬間、ふいにいつかの鏡子との出来事が頭の中を過った。
『……さっき、考えてたんですけど』
『あたしやっぱり…修史さんのことが知りたいです、』
『だから、もっと傍にいさせて下さい。予定通りにあたしとデートもして下さい』
「…鏡子」
その言葉は確か、俺が鏡子とデートがしたいって言って、でも自分の本性を隠しまくっていた俺はそれがバレてしまった日の夜中に鏡子に言われたんだ。
あの夜も確かこうやってソファーで寝ていて、そこに鏡子がやって来たんだっけ。
で、鏡子がそう言ったら俺は…
『……それ、後で後悔したって知らないよ』
『鏡子が“やっぱり修史さんはイヤ”って言っても、俺離してやんないからね』
目の前にいた鏡子に、そう言った。
離してやんないって、言った。
でも離してしまった。
鏡子はもういない。