2人だけの秘密。


だけどせっかくのチャンスだし、断る理由もない。

そうしているうちに事は進んで、ある日その支店の従業員の履歴書を見せてもらった。



「異動の日が近づいてきてるから、事前に従業員の顔と名前を一致しておけ」

「はい、」



そう言われたと同時に、その履歴書を受け取る。

一枚一枚じっくりと見させてもらって、一番最後の履歴書を見ると…



「…!!」



そこには、紛れもなく夢の中の「鏡子」がいた。


まさかこんな偶然が存在するなんて思わなかったし、俺はびっくりしてしばらく動けなかった。

…間違いない。目がぱっちりとした可愛らしい顔立ちに、セミロングの綺麗な黒髪。

それに、一番の証拠である「鏡子」という名前。



…───鏡子に会えるんだ。




そう思ったら、異動の日が楽しみで仕方ない俺がいた。



……でも、それと同時にこんなことも考えた。



鏡子も、俺のことを知っているんだろうか?

どういう印象を持っているんだろうか?


学生の時とはいえ、あれだけ好き勝手に遊んでいてやりたい放題だった俺は、確実に鏡子からしたら苦手なタイプだろう。

だけど、せっかく会えるんだからいずれは相思相愛になりたい。

もしずっと一緒にいれる未来があるなら、今は自分を偽ればいい。



そう考えてようやく出した答えが、あとあと見破られることになる「誠実」なイメージを鏡子に持たせることだった。




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