2人だけの秘密。


お昼休憩が終わって倉庫に戻ろうとしたら、

そこへ柳瀬店長があたしに話しかけてきた。



「あ、五十嵐さん」

「!」



その呼び声にあたしが「はい」と返事をして声がした方を向くと、柳瀬店長が申し訳なさそうに言う。



「五十嵐さんって、今日遅番だったよね?」

「はい、そうですけど」

「じゃあ、閉店後に少し残ってくれない?手伝ってほしいことがあるんだけど…」

「!」



柳瀬店長はそう言うと、若干不安げにあたしを見つめる。


それってつまり、残業だよね。

え、困る。

せっかく広喜くんと会う約束してるのに。


あたしはそう思うと、申し訳なくなりながら柳瀬店長に言った。



「え、えっと…今日はちょっと…」

「!」

「大事な用事があってですね、残業は……」



しかしあたしがそう言って恐る恐る柳瀬店長を見ると、

柳瀬店長はさっきの申し訳なさそうな顔から不満げな顔になっていて…。

その表情に少しだけびっくりしていたら、柳瀬店長が呟くように言った。



「……大事な用事、ね」

「?」

「出来れば、彼氏との約束より仕事を優先してほしいな」

「!?…っ、」



柳瀬店長はそう言うと、わざとらしくニッコリ笑って見せた。


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