2人だけの秘密。
吉河さんはそう言うと、深くため息を吐きながらその辺の椅子に座る。
するとふいにあたしの方に目を遣って、言った。
「…あんたはいいわよね。お客さんと関わることがほとんどないんだし」
「いや、あたしだってお客さんと関わることくらい…」
「それは、子ども達だけでしょ」
あたしの言葉に、吉河さんがすかさずそう言う。
内心、痛いとこつかれた、なんて思いながら仕事をしていたら、そこへまた倉庫のドアが開いた。
ガチャ…
「?」
誰だ、と思いながら振り向くと、そこに入ってきたのは絵里奈で。
絵里奈は吉河さんを連れ戻しに来たらしく、吉河さんを見つけるなり言った。
「あ、やっぱりここにいた!」
「…げ、」
「吉河さん、早く売り場に戻るよ!今日は珍しくお客さんがそこそこ来てるんだから、」
絵里奈はそう言うと、吉河さんの腕を掴んで倉庫を出ていく。
ぐいぐい引っ張っていくから吉河さんが「え~」って物凄く嫌そうな声を出したけど、
結局絵里奈に連れられて倉庫を後にしてしまった。
……でも、パートさんは良いじゃん。
ちょっと早めに帰れるし、残業がないんだから。