2人だけの秘密。

「おー。あ、けど先行ってて。俺あとで行くから」

「おっけー」


俺がそう言うと、仲間達は先にハンバーガーショップへと向かうべく教室を後にする。

…実は今、金が底を尽きてる俺。

家に寄って、金を調達してこないといけないのだ。

そんな時はいつも、俺は親に黙って財布から金を抜き取っていた。

直に言うと絶対に渡してくれないから、いつもこうやって抜き取っている。

…けどそれは、ダミー財布がいくつかあって、いつも手こずるのが面倒くさいところ。


「っ…くそ、これもダミーじゃねぇかよ!」


そう。母親は知っているのだ。

俺がいつも財布から金を抜き取っていること。

そんな行動をし始めた当初はすげー怒られたけれど、もちろん怒られただけじゃ聞かない俺に母親もいい加減呆れ、今じゃダミー財布をいくつも用意するのは当たり前。

…だからたまに、本物の母親の財布を見つけられなくて諦める時がある。

けど今日は…


「っ…しゃ!発見!」


一時間以内には発見が出来て、俺は早速その中から金を抜き取った。

…けど、入っていたのはなんと五百円玉がたったの一枚だけ。

くそ、読まれてやがる。

だけどそれしかないのなら仕方ない。俺はその五百円玉を握ると、直ぐ様家を後にした。
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