2人だけの秘密。
吉河さんにそう言われ、あたしは渋々柳瀬店長に言った。
「柳瀬店長、ビールお注ぎしましょうか?もっと飲んで下さいよ~」
そう言って、瓶ビールを柳瀬店長に向ける。
すると柳瀬店長は「ありがとう」と言って、コップを差し出した。
そしてそのコップいっぱいにあたしがビールを注ぐと、今度は柳瀬店長があたしから瓶ビールを奪って言う。
「じゃあ、俺も鏡子ちゃんに注いであげる」
「えっ」
「鏡子ちゃんもいっぱい飲んでよ~。ほらっ」
柳瀬店長はそう言うと、半ば強引にあたしのコップにビールをたくさん注いだ。
「いや、ちょ、入れすぎですって!」
「いいからいいから、グイグイいっちゃってよ」
「……」
その言葉に、あたしは戸惑いながらも従順に従ってしまう。
上司からそう言われたら「嫌です 」とハッキリ言えないあたしは、本当にそのビールをグイグイ飲んでしまった。
その時に一瞬だけ見たのは、柳瀬店長のあたしだけに向けられた妖しい微笑み。
しかも元々お酒が弱いあたしは、その後ビールのせいで見事に酔い潰れてしまった―――…。