妖刀奇譚
「だが、その棟口というやつはあの付喪神について情報を持っているのかもしれんのだろう。
おまえより心得ているおれが話を聞いた方が都合がよくはないか?
おまえ独りで話を聞きに行って、そこから付喪神について推察する自信があるのなら別に構わんが」
「うっ……」
痛いところを突かれ、思葉は顔をしかめた。
推理パズルや論理的思考力を問われるテストは苦手分野である。
正しい方向へ憶測を導ける自信はほとんど無い。
「それに、万が一その家に付喪神が逃げ込んでいたらどうする。
おまえ独りで闘うことはできるのか?」
「できません」
「じゃあ、おれを連れて行かない訳にはいくまい」
なんだか玖皎の声音に意地悪さが含まれた。
人型をしていたら、絶対に悪い顔をしているはずだ。
思葉はため息をつきたくなったが、護って欲しいと言ったのは他でもない自分なので我慢する。
(棟口さん、絶対にあたしに会いたくないって思っているはずだから、なるべく刺激させないように行こうと思っていたのに……。
玖皎なんか持って行ったら絶対に警戒されるわよ)