妖刀奇譚
だが、思葉にはもう連れて行かないという選択肢はなかった。
ぐしゃぐしゃと髪を掻き、シャーペンを置いて腕を組む。
「どうやって連れて行こう……できるだけ不自然にならないようにしなくちゃ」
「そんなに気にせねばならんのか?」
「当たり前よ、青江さんはともかく棟口さんは普通の人なんだから。
棟口さんじゃなくても、いきなり家に来た人が太刀なんか持っていたら誰だって警戒するわよ。
下手すれば警察に通報されちゃうわ」
「ふうん、よく分からんが大変なのだな」
「感心してないで、あんたも一緒に考えて。
何かいいアイディア出してよ」
「いや、おれは現代の感覚が分からないから無理だ、おまえに任せる」
(あっ、投げられた)
思葉はふくれて玖皎を睨んだ。
しかし声どころか何の反応も返ってこないので諦める。
自然に、かつ棟口に警戒心を持たれないように玖皎を連れていくにはどんな言い訳を用意するのがいいか。
いい案が思いつかず、ひとまず課題を終わらせてから考えようと思葉は机に向かった。