妖刀奇譚
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昨日棟口に書いてもらった住所は、満刀根屋から歩いて10分程度の場所だった。
どうにか残りの課題を済ませ、身支度を整えてから、思葉は歩いて棟口の家に向かった。
もちろん玖皎も連れて来ている。
「ええと、この辺りの……あ、あった」
「棟口」の表札が掲げられていたのは、瓦屋根が目立つ一階建ての家だった。
玄関からこぢんまりとした和風の庭と、裏に建っているそれなりの大きさのある蔵が見えた。
外観だけで、かなり年季が入っていることが分かる。
あの古い櫛や簪をしまった箱が置いてあるのも納得できた。
「ほう、満刀根屋よりも古い家だな」
『刀剣青江屋』へ出かけたときと同じように杜若色の鞘袋にしまわれた玖皎が、関心した声を出す。
周囲に人影がないことを確認してから、思葉は柄あたりを軽く叩いた。
「何をする」
「喋らないでよね、棟口さんに変な目で見られるでしょ」
「おまえが黙っていれば問題ないのではないか?」
「あんたの受け答えしているせいで変人扱いされんのよ」
「分かった分かった」