妖刀奇譚
玖皎が唐突に言う。
「おまえ、そういうところ晴明に似ているな」
「えっ、ど、どこが?」
「厄介事の種になるところ」
遠慮のない言い方にかちんときたが、事実トラブルのきっかけとなっているので反論できない。
明るい声が聞こえてきたので前を向くと、自転車に跨った女子高生が道を横切って行った。
長い黒い髪が、風圧でさらさら浮いていたのを目にする。
付喪神が憎んでいる、黒くて長い髪。
その髪型の女性は山ほどいる。
「……これ以上被害が出たらどうしよう」
裏口の鍵を開けながら思葉は呟いた。
玖皎がうーんと小さく唸る。
「今は本体ごとどっかに行っちまっているからな。
棟口の蔵にしまわれていたときと違って、髪をちょっと切られるだけじゃ済まないかもしれん」
「そんな……」
「まあ、さすがに死人やけが人が出てくれば専門職の奴らが動くとは思うが」
『専門職』とは、陰陽師や霊媒師などのことだろうか。
それよりもその前に出された言葉に対し、思葉は眉間にシワを寄せた。
「ちょっと、縁起でもないこと言わないでよ。
それにその言い方、けが人が出てくるまで放っておけってこと?」
「そうは言ってないだろう」
「そう聞こえた」