妖刀奇譚





「……まあ、夜更かしは認めるけど、そんなに遅い時間まで起きてはいないよ」



思葉は唇を尖らせて言い、またあくびをした。


眠たい原因は來世に指摘された通りだ。


今、思葉は毎晩玖皎を片手に、付喪神を探して夜の街を走り回っている。


夜中で寒いし、さすがに徹夜は身体に毒なので、出かける時間帯は日付が変わる頃から丑三つ時が過ぎるまでだ。


本当はもっと早い時間帯から探しに行きたいのだが、補導員に見つかる危険性が高いので我慢する。


帰宅したら課題と軽い夕食を済ませて時間まで睡眠をとり、戻ったら普段より30分ほど遅い時間までまた眠る。


睡眠時間は十分にとっているのだが、不規則な生活のせいで日中の眠気はすごかった。


そのため今、店を開く余裕はない。


店番をしている時間があるなら眠っていたいのだ。



(まあ、おじいちゃんはずっとお休みにしていても構わないって言ってくれたからね……。


お店にもお休みの貼り紙は書いておいたし、問題はないよね)



永近が帰ってくるまで店を開けるつもりはないと話すと、來世が不満そうな声を上げた。



「ええ、なんだよそれー、店長がいないからってさぼるなよ、仮店長ー」


「うるさいわね。簡単に言ってくれるけど、お店のことを独りで全部やるのは大変なんだよ。


店番だけやるのとはわけが違うんだし……土日で身に染みてそれを感じたから、平日は全部お休みすることにしたわ。


課題もあるし、定期試験だって遠くないんだし、帰ってから2時間ちょっとだけ営業するのもあれだからね」




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