妖刀奇譚
表通りから逸れ、坂道を進む。
緩いカーブの多いこの道を行った先に、2人の通っている高校はあった。
同じ制服を着た生徒がちらほら居る。
「ちぇっ、なんだよー、おまえが店長やっているところ冷やかしに行ってやろうと思ってたのに」
「来なくていいわよ、邪魔なんだから」
「おおうっ、毒舌よくない」
大げさに來世が身を縮こまらせる。
普段なら一蹴りするふりをしているが、連日の不規則な生活でそんな元気はない。
「あ、おはよう、思葉ちゃん」
「綾乃さん、おはよう」
絶対に営業しないと言ってもまだ駄々をこねる來世と言い合っていると、昇降口で綾乃に会った。
少し遅れて、そこへ実央が合流する。
「おっはよー、思葉ちゃん、綾乃ちゃん」
「おはよう、実央さん」
「珍しいね、思葉ちゃんがこんなにゆっくり登校するの」
「うん、わたしも思った」
「武川、おれだけスルーしたのは故意かよ」
「え、なに、いたんだ辻森」
おどけて自分を指さす來世に、実央はそっけない態度をとった。
もちろんわざとである。
返事を聞いた來世が「うわっ、うわっ、人でなし」とさらにふざけたので、思葉と綾乃は吹き出した。