妖刀奇譚
思葉は気づいたことを矢継ぎ早に質問していく。
隣から來世の感心した視線を感じる。
でも、言っていることの大半は適当だ。
根拠なんて一切なく、怪しいな、と感じたところをどんどん喋った。
古美術についての知識はそこまでない。
骨董品屋の子どもというだけでかなりの打撃を食らったらしく、長谷部は形にならない言葉をぶつりぶつり口にするだけで会話にならない。
肩書きの破壊力をしみじみ感じた。
あとひと押し。
「ちょ、ちょっと待ってください」
思葉が画に押された印についての疑問を並べていると、ずっと言われっ放しだった長谷部がようやくまともな言葉を口にした。
ネクタイをわずかに緩め、深く呼吸をする。
それでいくらか余裕を取り戻し、不愉快そうな目つきで思葉を見据えた。
「……どうしても、この商品にけちをつけたいようですね。
そんなに仰るならば、これが贋作であるという決定的な証拠を見せてくださいよ」
(そう来たか)
思葉は掛け軸に目線を下げた。
楼閣と林、鳥の三種が描かれた画を見つめる。