妖刀奇譚
「手伝うよ、皆藤(かいとう)さん」
するとそこへクラス委員の御手洗(みたらい)が駆け寄ってきた。
「ありがとう。じゃあ、あの水拭くのお願いしていい?
あたしがあの破片集めるから」
「分かった。手を切らないように気をつけてね」
「うん」
御手洗は雑巾とバケツを引っ張り出すと、すたすた半円に近づいた。
「ほらみんな、片付けるからどいて」
見てるなら手伝いなさいよー、と言いながら床を濡らす水を拭いていく。
思葉が追いついて破片を集め始めると、野次馬たちは気まずそうに顔を見合わせて席に戻っていった。
井上たちもゆっくり離れていく。
「どうして花瓶が割れてたのかしら」
雑巾をしぼりながら御手洗が首を傾げる。
それは分からないことなので、思葉は曖昧に答えるだけにした。
自然に落下したとは考えられない。
人為的であることは明らかだ。
ただ、それが事故なのか故意なのかまでは推測できない。
破片を集め終えて時計を見上げると、もうすぐ担任が来る時間になっていた。
思葉は口をしっかりと縛ったビニール袋を持つ。
「危ないから、この破片先に捨ててくるね」
「ありがと、皆藤さん。先生には言っておくよ」
「お願い」