妖刀奇譚
そういうものなのかとは考えた、しかし胸のもやつきは晴れなかった。
あの蟠りを解消するにはどうするべきだろうか。
(かと言って、そう簡単に玖皎の過去は聞けないよね……)
彼は平安時代の、一条天皇の在位中につくられたとだけは教えてくれた。
つまり千年以上前からこの世に存在していたのだ。
さらに玖皎は太刀、戦場で人を斬るために使われる武器である。
何にも悟れないほど思葉は鈍くない。
それを考えると、おいそれとは尋ねられなかった。
自分が質問することによって思い出させてしまうのも避けたい。
(……だけど、だからってこのまま、おかしなぎくしゃくを抱えて一緒にいるのは嫌だな)
人と関わるのは少しだけ苦手だ。
けれど傍にいる人と関わらないままでいられるほど図太くはない。
どうにもさじ加減が分からず難しいのだ。
「うーっ、どうしよう」
頭を悩ませていたら、うっかり言葉が飛び出した。
來世が大袈裟なくらいぎょっとして、単語帳から顔を上げる。
「何だよいきなり、また数学に躓いた……んじゃなさそうだな」
「コミュ障ならではの悩みに頭を働かせているだけよ、コミュ力カンストしてるあんたが一生悩みそうにない内容だから気にしないで」
「はあ?おまえ接客業の家の子がそんなんでいいのかよ」