【完】狂犬チワワ的彼氏
「無理、しなくていいからな」
「…え」
無理?
「だから、嫌だったら嫌だってはっきり言ってくれていいよってこと。
じゃないと俺…知らないままやっちゃうし」
「……何を?」
その言葉にあたしがそう問いかけると、拓海くんがあたしの方を振り向く。
そんな拓海くんに、あたしが?を浮かべていたその時…
「…!?」
「こういうこと、」
拓海くんがふいにあたしに顔をぐっと近づけてきて…
キスの直前でそれを止めてそう言った。
そんな拓海くんの行動にあたしがビックリしていると、拓海くんがあたしからまた顔を離して言う。
「…だから夕べみたいに、我慢とかすんな」
そう言って、切なく笑った。
「…っ、」
そのイキナリの行動にあたしはドキドキしつつ…思わずその場に固まってしまう。
こ、ここ…人がわんさかいるショッピングモールなのに。
だけど、そうは思うけど…拓海くんのさっきの言葉のせいでその恥ずかしさがすぐに薄れた。
…違う。違うよ。
あたしは、拓海くんとのキスを嫌だなんて思ったことはない。
拓海くんは、あたしのせいで勘違いしちゃったんだ。
あたしが、拓海くんとのキスが嫌だって。
中途半端に逃げ出したりするから…。
そしてあたしに背を向ける拓海くんに、あたしは引き留めるように言った。
「違うよ、拓海くんっ…」
「…?」