【完】狂犬チワワ的彼氏
そいつは俺に気がつくと、嬉しそうにすぐに走って来た。
「ごめんな。待っただろ?」
そんな猫の頭を優しく撫でてやると、俺は早速家から持ってきたキャットフードを取り出してそいつにやる。
すると物凄い勢いで美味しそうに食べるから、俺はその姿を切なく見つめた。
……本当は家で飼いたいし、普通なら俺の家は一軒家だからそれは可能だ。
だけど、どうしても出来ない。
だって俺達兄弟の中で、拓海さんが唯一の猫アレルギーだから。
だからごめん。
こんなことしか出来ないんだよ…。
「…じゃあ、また来るからな」
俺はしばらく猫の頭を撫でると、やがてその場から立ち上がってそいつから離れた。
そして……忘れちゃいけない。
猫を触ったあとは、必ず近くで手を洗うこと。
それが終わると、何も無かったかのようにして家に帰る。
あまり長く猫と一緒にいると毛がついちゃうかもしれないし、その辺ももちろん配慮しないといけないのだ。
家に帰ると、もう既に智輝さんが帰って来ていて、キッチンで晩ごはんの支度をしながら俺に言った。
「なぁ龍也。俺、要らなくなった彼女がいるんだけどさ、お前要る?っつか、やるよ」