domino
 「もっと血がほしい。」

 その物欲しそうな声は、僕を恐怖のどん底に陥れるのには十分すぎた。
 
 目を覚ますと体中の汗腺という汗腺から汗が噴き出していた。
 「なんて嫌な夢を見たんだ。」
 僕の息づかいはとても荒くなっていた。深く、深く呼吸をしていると口の中に、まるでさっき見た夢のように違和感を覚えた。嫌な予感が頭を過ぎりながらも、恐る恐る口の中を探った。親知らずの奥の方に確かに何かがあった。なかなか取れず気分が悪くなり嗚咽をすると、その嗚咽と同時に異物が取れた。

 ねずみ色の糸。

 それを見た僕はトイレに駆け込んだ。
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