domino
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 最悪の気分だった。ただ、僕があんな事したなんて考えたくもなかった。そんな事が僕に出来るはずがない、そう思うしかなかった。そうとしか思えなかった。
 とにかく今は現実へと気持ちを転換しよう、その事ばかり考えながら駅に向かった。そして、いつものように彼女が隣の駅で乗ってきた。
 
 「おはようございます。」
 彼女の笑顔に僕の気持ちはだいぶ救われた。
 「いよいよ、明日ですね。ポルノグラフィティ。」
 あれだけ喜んでいたはずなのに、色んな事がありすぎてすっかり忘れていた。でも、そんな事は微塵も感じさせないように、すごく楽しみにしているんだと彼女に思ってもらえるように明るく答えた。
 「そうですね。あれから何回もDVD見ましたよ。だから、明日は大丈夫です。」
 本当は決して大丈夫ではなかったけど、彼女にそんな事を悟られたくなかった。けれども、それは無駄な努力に終わった。
 「本当ですか?なんか、DVDの見過ぎで寝不足って顔してますよ。」
 そう言って僕の顔をまじまじと見た。それが恥ずかしくて思わず目を反らしてしまった。
 「ところで、私、大河内さんの連絡先知らないんですけど、明日どうすればいいですか?」
 遠回しに電話番号を聞いているように僕には聞こえた。ただ、こう言う時にどう伝えればいいのかがわからなかった。うろたえた感じでポケットから携帯を取り出し、彼女に番号を見せた。
 「これです。」
 やはり、彼女も電話番号を教えてほしい、そう思って僕に言ってくれたのだろうか、喜んで自分の携帯を取り出した。
 「大河内さんの下の名前は?」
 「あ、彰です。」
 僕の携帯が軽く震えた。
 「それが私の番号です。」
 彼女がとても近くに感じられた。そして、同時に今朝の夢がどんどん薄れていった。
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