domino
 この言葉は脅迫に近かった。僕は彼女と真剣に付き合っているつもりだ。だから、レースが終わってもずっと一緒にいるつもりだった。
でも、少なくとも彼女のお父さんはそうは思ってくれていないようだった。僕が彼女の事を想っているなら、会社を辞めろと言っているようにしか聞こえなかった。
 彼女が僕の事をそこまで想ってくれているなんて考えもしなかった。でも、落ち着いて考えれば入院した時の献身的な行動はそこからだったのかもしれないと思った。僕はあの時の恩返しを彼女にまだ何もしていなかった。
 「僕は彼女の事を真剣に愛しています。わかりました。おっしゃる通りにいたします。」
 即決した僕に少し驚いている様子だったが、そんな態度がますます彼女のお父さんに気に入られたようだった。僕の方に歩み寄り握手をしてきた。
 「ありがとう。本当にありがとう。」
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