domino
68
 レースが終わると僕の周りは慌ただしく変化していった。
 
 「本当に会社を辞めるのか?」
 そう言う社長の顔にはいつもの“出来る男”の雰囲気はなかった。何か寂しげでまるで迷子になった子供のように不安そうな目をしていた。社長のその目は僕の決心を揺らがせた。でも、彼女のためにも心を鬼にして辞める事にした。
 荷物を抱え通い慣れたビルを見上げると胸にこみあげるものがあった。でも、寂しさより、これから起きるであろう、色々な幸せに期待する気持ちの方が大きかった。
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