悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜
自分の腕から女を排除し、最高の笑顔で

パホーマンスをする。


「申し訳ございません。お気持ちは嬉し

いのですが、損得抜きで彼女を愛してい

ます。あなたに気持ちが揺らぐことはあ

りません」


女は、プライドを傷つけられたのか、顔

を真っ赤にしてどこかへ消えて行った。


会長が、自分の為に謝罪する姿をあの女

は見るべきだ。


こんな素晴らしい会長を、娘婿である社

長と孫は見習うべきなのに親子して会長

に迷惑をかけているとなぜわからないの

だろう⁈


まぁ、俺にはもう、関係のないことだ。


狐狩りは、済んだ。


トドメを刺されて、息を吹き返すことは

ないだろう⁈


さぁ、これからが本題だ。


彼女を連れ出しベランダに出ると、外は

肌寒く彼女は自分の腕で体を抱きしめて

いる。


上着を肩にかけてやると他人行儀に戻っ

ていた。


(また、戻ったか)


彼女は、恋人ではなく婚約者だと紹介し

たことに腹を立てているようだ。


恋人と紹介しようが、婚約者と紹介しよ

うが俺には、たいして変わりはない。


反論する姿に苛立ち、辛辣な言葉を吐い

てしまった。


すると


「……ご自分で乗り切れるなら私がいな

くてもよかったと思います」


キッと睨んだかと思えば、シュンとする

姿に言い過ぎたと反省した。


「そんなことはない。君がいたおかげで

会長も俺の嘘を信じてくれた…あの孫を

紹介されたら断りにくかったから、助か

ったよ」


泣きそうな顔する彼女…俺のせいだと思

うと彼女の手を引っぱり腕の中に捕らえ

ると顔をあげ、見つめる彼女の頭部を押

さえ唇にキスをしていた。


どんな表情も愛おしい。


こんなに彼女にはまるなんて、あの日の

俺は想像できただろうか?


啄むキスから角度を変え何度も唇を堪能

し、それじゃ足りなくて唇をこじ開け舌

を絡める。


甘いキスに酔いしれていたのに必死に抵

抗しだし、離れると睨んでくる。


だが、睨んでもそれが余計に可愛いと思

えてくるのだから重症だ。


「…副社長……これ以上は必要ないと思

います」


それなのにつれない彼女は俺に背を向け

た。


< 30 / 69 >

この作品をシェア

pagetop