悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜
「彼だと⁈ 言い訳なんて聞きたくない

。出て行け…」


デスクにある書類などを撒き散らして零

が怒鳴った。


「……申し訳ございませんでした。失礼

します」


今にも涙が溢れそう。


グッとこらえて頭を下げたまま謝ると、

彼の顔を最後に見たいと思った。


屈めた腰を起こし、零を見ると立ち上が

っている彼は、憎んでいるように私を上

から睨んでいた。


嫌われてしまった。


もう一度、頭を下げ副社長室を出て秘書

室へ……


自分の荷物を整理し、机の上に退職願と

婚約指輪を置いた。


これで…さよなら


溢れてくる涙が止まらない。


部屋を出るときに一度副社長室へ続くド

アを見つめた。


あのドアが開いて、零が私を抱きしめて

くれる。


そんな都合のいい妄想が浮かぶ。


ふっ…馬鹿みたい。


さよなら…零


あなたに最初に会ったあの日からあなた

に魅力されあなたに恋していたわ。


私は、何も持ってないもの。

あなたのように人を惹きつける魅力もお

金も地位も何もない。

こんな私はあなたにふさわしくないとわ

かってる。


もう少し若ければ、若さを武器に玉砕覚

悟であなたに愛を告白できたでしょうけ

ど、もう、そんな勇気もないから……


自分に自信がないから……

私以外の別の誰かとあなたがいるところ

なんて見たくないから……


臆病な私


卑怯な私


惨めな私


どんな言い訳をしても、自分が傷つくの

が怖いから…結局逃げてる。


あなたの記憶に残るなら、綺麗な思い出

のままでいたかった。


あんな目で睨まれるなんて…


あなたの記憶には、私は憎悪の対象でし

かないわよね。


それなら私を憎んで…あなたの記憶に一

生残るぐらい憎んで欲しい。




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私は、退職届けを出した日にアパートの

荷物を引っ越し業者に頼んで実家に帰っ

てきた。


職を失い、愛する人を失い心が空っぽ。


週に1〜2度、金城さんと食事したり、

映画を観に行ったりデートを重ねていた

けど…いつも、表情や仕草を零と比べて

いた。


このままじゃいけない。


彼を好きになろうと努力しよう。


そう思うのに私の心の中は零が独占して

いている。
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