悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜
「胡桃さん、ボーとしてどうされたんで

すか?」


はっ…今、金城さんと食事中だったんだ


「ごめんなさい。少し考えごとしていて

……」


食事の手を休め、金城さんに頭を下げた


「…いいえ…あなたとこうして食事がで

きるようになって僕は浮かれていました

。あなたの心が別のどこかにあるとわか

っていながら見ない振りをしてきました

。」


「……そんな…ごめんなさい」


「どうして謝るんですか⁈それは認めた

ってことですよね」


「……」


「あなたを責めている訳じゃないんです

よ。初めてあなたにお会いした時から気

づいていたんです。それなのに僕は、あ

なたの心につけ入ろうと邪な考えで今日

までデートを重ねてきました。この1ヶ

月、一目惚れのあなたとこうして短い間

でしたが一緒に過ごせて楽しかったです

よ。でも、あなたの辛そうな表情を見て

いると僕ではあなたの心を満たす事が出

来ないとわかりました。こうしてお会い

するのも最後にしましょう…」


金城さん、あなたにはお見通しだったの

ね。あなたのような優しい人を利用して

傷つけてしまうなんて…ごめんなさい。

あなたを好きになれたら幸せにしてくれ

るとわかっているのに、心は彼を求めて

いる。


「ごめんなさい。私の方こそあなたの優

しさにつけ込んで甘えていました」


金城さんは、笑っているのにとても辛そ

うだ。私があなたにそんな表情をさせて

いるのね。


「気にしないでください。お互い様です

よ。あなたには幸せになって欲しい。僕

を振るのだからあなたの後ろで僕を睨ん

でいる彼と幸せになってください」


「ありがとうございます。……後ろで睨

んでいる彼と幸せになりま…」


えっ…


金城さんを見ると困惑気味に私とその背

後を見ていた。


そっと振り向くと後ろの席で零がこちら

を向いて1人で座っている。


うそ…どうしてそんな表情をしているの


あなたが金城さんを睨む理由なんてない

でしょう⁈


「お二人でゆっくりお話しされるといい

でしょう。その為に彼に来て頂いたので

すから僕は、これで失礼します」


「……か、金城さん。待ってください」


笑みを絶やさず金城さんが立ち上がって

席を外そうとしたのを声をかけて止める

と、金城さんの前に立ちはだかる。


「金城さん、私を好きになってくださっ

てありがとうございました」
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