Love nest~盲愛~
えなだけは奪われたくない。
えなと彼女の父親との思い出を奪い去るように、彼女の父親の会社まで奪い、哲平の心をズタズタに切り裂いた人達。
哲平は何の力もなく、ただ茫然と時が流れるのを待つしか出来なかった。
だが、今は違う。
法律も勉強し、あらゆる甘い誘いにも屈しない信頼関係を築いた仲間がいる。
それと、心に寄り添い、漲る力を与えてくれる恋人の存在も。
だから、もう無力でもなく、立ち向かう勇気もある。
けれど、この目の前の悪魔のような人間に常識的な報復が通じるとも思えなくて。
長い年月をかけて、少しずつほんの僅かでも地盤を固めて来た。
まだ、最後の一撃を与えるには早過ぎる。
もう少し際になるまでじわりじわりと何かに追われる恐怖を味わうがいい。
*
先付から始まり、椀物、向付、鉢肴、強肴、揚げ物、蒸し物、止め肴と進み、嫌味らしい言葉一つ無いことに逆に恐怖心が芽生え始めた、その時。
ご飯、止め椀、香の物が運び込まれている最中、養母が1枚の写真を出して来た。
「この写真に見覚えは?」
「ッ?!」
そこに写っていたのは、紛れもなく私だ。
しかも、彼に手を引かれ車に乗り込むほんの一瞬を写した、キャバクラ『violette』から出た、あの夜の……。
あの当時から私に監視は付いていなかっただろうから、これは彼に監視が付いていて、その一部始終を狙って撮ったものなのだろうけど。
こんな水商売の女を西賀家の嫁(まだ籍は抜いてないから)には迎えられないとでも言うつもりなのだろうか。
後悔しても手遅れだが、こんな形で彼の足を引っ張ることになるとは。