Love nest~盲愛~



「えな様」

「はい」

「これから出掛けますので。戻りは夕方になるかと思います」

「分かりました。お気をつけて」

「では、行って参ります」


珍しく今井さんが不在にすると。

月に数回、銀行に行ったり買い物をしたり、この家の事務的業務を執事長と共にしているらしい。



昼食を終え、庭にあるハーブガーデンでお茶と読書を楽しんでいると。


「えな様」

「はい」

「若様がお待ちです」

「え?」

「とある場所にて、えな様をお待ちです」


今朝は何も言ってなかったのに。

今井さんからも何も言われてないけれど、急に予定変更になる事もよくある。


「分かりました。直ぐに準備して来ます」

「こちらは片付けておきます」

「あ、すみません」


片付けを任せて、自室へと着替えに向かう。


上質な手触りのニット地で胸元は三つボタンのVネック、スカートの裾はフリンジになっていて、ウエストに裾と同じフリンジ仕様の結び紐があしらわれている上品なワンピース。

いつものようにバッグにグロスとスマホとハンカチだけ入れて、部屋を後にした。


エントランスに横付けされている黒塗りの高級セダン車の後部座席に乗り込むと、車は軽やかに発進した。

30分ほど車に揺られ、到着した先は……。


「ここは?」


白を基調とした北欧風の建物が目の前に。

看板らしい看板は見当たらない。

隠れ家的お店なのかしら?

入口へと誘導され、ドアが開かれた。

中に入ると、お店というより別荘といった感じの造りで、出迎えてくれる人の姿もない。

恐る恐る中へ足を踏み入れてみた、その時。

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