Love nest~盲愛~

「また会えたな」

「ッ?!あなたは………」


リビングと思われる広々とした部屋のソファーに男の姿がある。

何日か前にホテルの和食処で顔を合わせた、哲平さんの義兄だ。

何故、ここに?

私は哲平さんに呼ばれて、予約したお店に来たはず……。

えっ、もしかして、騙された?

そうか、哲平さんが言っていたスパイとは……彼だったんだ。


後悔してももう遅い。

注意が足りなかった自分が悪いのだけれど……。

すぐさま震える手でバッグの中からスマホを取り出そうとした、その時。


「んッ?!!」

「俺がいるのに、誰を呼ぶつもりだ」


腕を掴まれてしまった。

しかも、まだ16時だというのに、お酒の匂いがプンプンとする。

リビングテーブルの上に視線を移すと、高級なウイスキーとワインのボトルが何本もある。

どうしたらいいの?

怒らせるような事をしたら逆上しそうだし、従順なフリをすればいいの?


「相手をしろ」

「っ……」


目が据わってる。

完全に酒に飲まれてる。

腕を掴まれ、ソファーに無理やり連れて行かれる。

強引に放られた体は軽い衝撃を受け、行き場を失う。



哲平の義兄・孝之はえなを一目で気に入っていた。

哲平のものは全て奪わねば気が済まない性格で、えなももれなく自分のものだと勘違いしている。

ソファーに倒れ込んだことで露わになった足先に孝之の手が。


「やっ、……触らないでっ」

「アイツには勿体ない。こんなに可愛らしい女は久しぶりだ」

「っ……」


顎を掴まれ、息をのむ。

キッと睨みつけても意に介さない様子で……。

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