Love nest~盲愛~


朝食後。

今井さんに屋敷内を案内して貰い、使用人さん達と挨拶を交わした。


この屋敷は彼所有のもので、彼のご両親は別のお屋敷に住んでいるそうだ。

“西賀哲平”という人物が何者なのか、今井さんに尋ねてみると。

『直接、お尋ね下さい』と、サラリとかわす返事が返って来た。


聞けるものならとうに聞いている。

聞いたところで彼が答えてくれるとは思えない。

何より、『等価交換』という、世にも恐ろしい契約があるのだから。



溜息まじりに自室へと戻ると。

今朝起きた時には無かったブーケが、ドレッサーの上に置かれていた。


小さなガラスの容器に生けられた、グラスブーケ。

淡いピンク色とクリーム色のガーベラが心を和ませる。


無意識にその場所へと足を運び、そっと花弁に指を滑らせる。

部屋に花を飾ったのはいつ以来かしら?


花を買う余裕もなければ、こんな風に一息つく事もここ数ヶ月無かったのだから。


こんな風に綺麗な花をじっくりと愛でる事が出来るだなんて。

彼との約束を除けば、最高の環境だわ。


夢のような邸宅。

優しい人達。

美味しい食事。

そして、何より………両親の写真を堂々と飾れるわ。


誰に気負うでもなく、見たい時に見れるだなんて。


感謝してもし切れない状況に、思わず目尻に涙が滲んだ。



彼の望むモノを満たさないと………。


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