Love nest~盲愛~


11時半を少し回った頃。

今井さんが、私を呼びに姿を現した。


12時頃に迎えの車が来るという。

私は慌てて出掛ける準備を施す。

と言っても、殆どの用意は出来ている。

言うなれば、手抜かりの無いように隅々までチェックを施すと言うのが正しいのかもしれない。


鏡の前で何度も顔を左右に振り、おかしな所が無いか厳しい目を向けて。



「えな様、そろそろお時間です」

「はい」


自分の持ち物の中では一番高級な服と靴で着飾って。

少しでも彼の逆鱗に触れないようにと細心の注意を払った。

彼の隣りにいても違和感の無いようにと、大人びたメイクを施して…。


自室から1階へ下りると、既に迎えの車が到着していた。

昨夜、ここまで運転して下さった白川さん。

その彼が、エントランスで後部座席のドアを開けて待機していた


「お待たせして、すみません」


私は素早く駆け寄って、深々と頭を下げると。


「若様がお待ちです。どうぞ、お乗り下さい」

「……はい」


渋いハスキーがかった優しい声音。

甘いバリトンボイスとは一味違うが、渋みのある声も素敵だと思えた。


昨夜と同じく、後部座席に乗り込んだ。

車は地を這うようにゆっくりと進み、いつの間にか、空を浮遊しているのかと勘違いする程、身体に感じる振動があまりに心地いい。


流れる景色を車窓から眺めると、私を乗せた車は、市街地の中心へと向かっているようだ。


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