君と想い出をもう一度
◇。゜◆・..


注文したクラムチャウダーとオニオングラタンが運ばれて来て、店員が去って行くのを見るとようやくラルムが食べる許可を出した。

わざわざ奥まった店、そして個室を選んだので物音さえ警戒していれば大丈夫なはずだ。


ラルムはむぐむぐとオニオングラタンを頬張るミュウを眺めてばかりで自分は全く食べようとしない。


「ラルムさんは食べないんですか?」

「ああ…いや、食べるけど」

「じゃあ食べて下さいっ、私ばかり食べるのは気が引けます。それに人間の本能的な部分が混じった姿を見られるのは、あまり嬉しくありませんのでっ」


ほう、とラルムが感心する。

優れた頭脳は健在か。


ようやくラルムがクラムチャウダーを一口すするとミュウも満足そうに微笑む。

普通、食べる量だったら男女差で私のが少ないはずなのになぁ…


そこがちょっと不満なのは秘密だ。


やがてクラムチャウダーを飲み終わり、ラルムが鞄から地図を出した。


「地図…?」

「ああ、この国の地図だ。この国は壁に囲まれている…が、広いから不自由しないんだ。分かるか」


「水やその他の天然資源が豊富なのですね。この地図によると…塩田や炭鉱、自然豊かなようですし」


記憶が無いとは思えない頭の良さに舌を巻くばかりである。


「…私は、何者なんでしょうか」

ふと、真剣な目つきでミュウがラルムを見据えた。


「何者…か。お前はミュウ=ジーヴル。下級貴族の娘だ。位は上だが秀才一族なため代々王室付き教授を勤めている」


「貴方は、貴方は…あの方を先生と呼んでいました」

「ボルドー先生のことか?あの人は…ミュウのお父上だ」


ミュウはサッと青ざめ、黙りこくってしまった。


そしてまた口を開く。

「でも、あの方は私とあまり似ていませんでした。あの方の瞳は瑠璃色、私は灰色でした」


「ミュウも、元は瑠璃色なんだよ」


にわかには信じられないだろう、瞳の色が違うなど。

「私は、あの方を傷つけてしまったのですね。私は───」


人を傷つけることを殊更に嫌うミュウは変わらない。

優しく髪を撫で、ラルムがあやすように声をかける。

「先生は理解しているから。ミュウが悔やむことはない……ミュウは、笑っていてくれ」


同じような台詞を聞いた。
あの優しい、自分の父親だと言われる人から。


「はい…この体を元に戻すにはどうすればいいのですか?」


気を取り直して尋ねた。


「そうだな…」

またラルムが鞄をゴソゴソ漁り、古い赤茶けた紙を取り出す。


「この宝石を探しに行くんだよ」
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