あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。







翌日。



とうとう出撃の前日。





夕方、彰の隊のみんなが店にやって来た。



いつもの寺岡さんや加藤さんだけでなく、総勢十人での来店だった。





「酒を配給されたので、ツルさんに美味いつまみを作ってもらおうと思って」





と石丸さんが微笑んだ。




ツルさんは「もちろん作らせていただきます」と明るく笑って、さっそく台所に入った。





あたしはお猪口を人数分、食器棚から出して、席に持って行く。





ふい、と顔を上げた彰と目が合った。




あたしは思わず目を逸らす。




だって、どんな顔すればいいか分かんないよ………。





「百合ちゃん、ありがとう」





石丸さんがにこっと笑って、お盆の上にのせたお猪口を配ってくれた。




石丸さんは、知らないんだろうな。



千代が石丸さんのことを好きだってこと。




なんにも知らないまま、明日には飛び立ってしまうんだ。





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