あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
そして………彰の手紙。



一文字一文字きれいに整った繊細な文字。




家族全員に、一つずつ書いたらしい。




真面目な彰らしいな、と思った。





お父さん宛て、お母さん宛て、弟さん宛て、妹さん宛て。





そこまできて、あれ、と思った。




もう一通ある。





最後の一通は…………







「…………うそ」






封筒の表には、





『百合へ』





と書いてあった。






どくん、と心臓が跳ねた。




耳の奥のほうで、どくどくどく、と脈の音が聞こえる。






あきら、と唇が勝手に動いた。





あきら、あきら、あきら。





声もなく、あたしは呼び続ける。





あきら、あきら、あきら、あきら。






なんて、優しい人。



なんて、ひどい人。





最後の最後まで、その優しさであたしを捉えて離さない、ひどい人。






気がつくと、あたしは駆け出していた。






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