上司に秘密を握られちゃいました。
“上司”の真山さんに頭を下げると「うまかったよ」と声が聞こえた。
「サンドウィッチ、ありがとう」
彼の笑顔は本当に癒される。
笑顔を見るだけで幸せな気持ちに浸れるのは、おかしいのかな?
「真山さん、まだお仕事ですか?」
「そうだね。残念だけど、まだ帰れそうにない」
『残念』というのは、私と一緒に帰られなくて、ということ?
勝手にそう解釈をして、頬を赤らめる。
「無理、しないでくださいね」
「藍華さん、ありがと」
最後に恋人の顔になった彼は、そう言い残して忙しそうに去って行った。
それから数日、少しずつ客足も普段通りに戻ってきた。
だけどその間、真山さんと会社で何度も顔を合わせたものの、デートなんて叶わなかった。