上司に秘密を握られちゃいました。
憧れの真山さんにキスされたのだから。
だけど、キスすら初めての私は、どういうリアクションをしていいのかわからない。
裁縫だけでなく、恋の勉強もしておけばよかった……。
「ごめん。俺、藍華さんと付き合えることになって、かなり舞い上がってる」
私、も。
真山さんの言動に一喜一憂してドキドキしたり、会えないことを寂しく思ったり。
きっとこれが恋というもの。
そして真山さんも同じように思ってくれている。
「私も、です」
恥ずかしくて顔を伏せたままそう口にすると、「よかった」と安堵の声が聞こえる。
「でも、あの……」
「ん?」
「あの……藍華って……」
「ごめん。呼び捨てなんて、ごめん」
そうじゃなくて……。
「いえ。藍華って呼んでください。その方が、うれしいです」