上司に秘密を握られちゃいました。

自然と涙が溢れてきた。

以前、不採用の通知が来たときに流した涙とは違う。
遠回りしたけど、やっと夢にたどり着いた。


「藍華は本当に素直だな」


私の頬に流れる涙をそっと拭ってくれた彼は、優しく微笑む。


「ずっと人事に推薦してた。やっと今日、正式に決まったんだよ」

「真山さん、ありがとう……」


声が震える。
『推しておく』と彼は言っていたけれど、本当に行動に移してくれたなんて。


「お礼を言うのは、俺の方だよ。
東郷に来てくれてありがとう。
それと……俺の彼女になってくれて、ありがとう」


『俺の彼女に』って……。

どうしよう。
これ以上ドキドキさせないで。
心臓が飛び出してしまいそう。


その日のチキンカレーの味は、きっと一生忘れられない。
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