上司に秘密を握られちゃいました。

大きな賞をとったというミステリーは、映像に迫力があって、最後まで犯人がわからずドキドキさせられた。

だけど、もっとドキドキしたのは……彼が私の手を握っていたから。


彼は思った以上に甘い。
仕事をキビキビしている姿しか知らない人には、絶対に想像できないだろう。


「はぁ、犯人全然予想と違ってた」

「私もです」


顔を見合わせて笑う私たちの距離は、確実に近づいている。


「ちょっと腹すかない? 飯、行こうか」

「はい!」


今までも仕事帰りに何度か食事には行ったけど、こんなに長くふたりでいられるのは、初売りの時以来。


「リアン行く?」

「いいですね。あのレストラン、すごくおいしかったです」

「それじゃあ、行こうか」


お昼には少し早かったけれど、再び駅へと向かった。
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