上司に秘密を握られちゃいました。
「ちょっと売り場に行ってくる。とりあえず読んでおいて?」
私に厚い書類を手渡した真山さんは、すぐにフロアを出ていった。
企画書なるものを初めて目にした。
こんなに重要な仕事に就いたことがない私は、少しおどおどしていた。
今までは、言われたことさえこなしていればよかった。
そこにプラスアルファのアイデアを付け加えるだけで、「よくやった」と褒めてもらえた。
だけど、ここの仕事は違う。
いちからアイデアを作りだし、人の動きはもちろん、それにかかる経費と売り上げのバランスまで予測しなければならない。
失敗すれば、東郷が傾くかもしれないほどの責任が伴う。
景気が絶好調とは言い難いこのご時世で、デパートはどこも生き残りをかけて様々な手を打ってくる。
それに負けたら終わり。