上司に秘密を握られちゃいました。


「早乙女様、こんなにお買い上げくださったんですか?」

「だってぇ。バレンタインは、女のいちだいイベントじゃないの」

「はぁ……」

東郷の紙袋の中には、三十ほどのチョコが並んでいる。
早乙女様の心は、すっかり女のようだ。


「この一番大きなのは、堀川さんによ。あっ、私のダーリン」


『ダーリン』ってホントかな……。


「これは雅斗君。私があんなに愛してあげたのに、他の女と結婚しちゃったわ。
ま、堀川さんに会えたからいいけど」

「あはは」


なんと言ったらいいのかわからずに、笑ってごまかす。


「ねぇ、藍ちゃんは手作り?」


私の耳元に手をかざして、コソッとつぶやく。


「いえ……私は……」

「手作りしなさいよ。
でも、もうひとつつけるのよ? ちゃんとラッピングして」


もうひとつ?


「もちろんチョコじゃないわよ。
自分にリボンつけて『ア、ゲ、ル』でイチコロよ」


耳が熱い。
真山さんのことを言っているんだ。
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